2018/12/14
ご無沙汰しております。気付いたら最終更新が一年半前でした。
ペンパアドベントカレンダー2018の14日目を担当させていただきます、齋藤すばるです。いろいろあって半年ほどパズル制作から遠のいていたのですが、先日発売された
ニコリ165号でパズル熱が再燃して空いていた一枠に駆け込みで登録させていただきました。
今日は「日の目を見ることのなかった新しいパズルたち」と題して、世間に出回ることのなかった没作品たちをまとめて大放出します(何かを語るというよりはただの出題回になってしまいましたが)。最初の方はわりと簡単な問題だと思うのでペンシルパズルに触れるのが初めてという方も是非チャレンジしてみてください。問題と解答はpdfで配布していますので、プリントして紙面上で解いていただくかスクショを取ってペイントで遊んでいただくかしてお楽しみいただけます。
まずは新規層に向けて「
オモパ」とは何かから軽くざっと説明します。
「
オモパ」とは、 季刊パズル誌の 「
パズル通信ニコリ」 (通称:本誌) の1コーナー「
オモロパズルができるまで」の略称のことです。これは読者から投稿された新ルールのパズルをたくさんの意見、応援作を通して一流のペンシルパズルへ育て上げていこうというコーナーです。毎号2~5種類ほど、多いときは7種類ほど新しいパズルが産まれ、中には読者から特に大きな人気を得て「二軍」と呼ばれるポジションへ昇格するものもあれば儚くも淘汰されていくものもあります。
「数独」や「スリザーリンク」みたいな単行本もたくさん出ている定番パズルで遊ぶのもいいですが、全く新しいパズルを遊ぶのもまた楽しいものです。みずから攻略の糸口を探って「発見」する感覚、これは手筋が固定化されてしまいがちな定番パズルではなかなか味わえません。何より今まで見たことない新しいルール、見たことのない盤面ってなんとなくワクワクしますよね。
作る側としてもなかなかエキサイティングで、自分の手がけたオリジナルパズルが広まって育っていくのを見ると何ともいねない幸せがあります。作り手の視点からだと、
5日目のひこうきさんの記事や、
12日目のほうきたてさんの記事でかなりディープな内容が語られていて面白いです。まあこの視点からはもう自分が語ることはなさそうなのでここでは深入りは避けておきます。
以下の問題はこのコーナーに向けて投稿したものの敢え無く没になってしまった悲しき未公開作品たちです。過去の投稿原稿を整理してみると、10種類もの没作品が出てきました。我ながらよくこれだけ作ったよなあと思います。前置きはここまでにして、さっそく本編スタート。
1. 直進サーキット
問題PDF本誌151号没作品。当時はこれと一緒に投稿した「ウソワン」を凌いで一番の自信作だったのですが、今見返すと「ヘルゴルフ」やら「さとがえり」をベースにループものにしただけというオモパ界隈の人なら誰もが一度は考えてそうななんともオードソックスなルールです。初期のルールでは黒マスがなかったのですが黒マスをOKにしたことで格段に作りやすさや自由度が上がったように思います。当時は名前を編集部の人が付けてくれると思っていて結構ありきたりにつけてました。三年越しに解きましたが初期の慣れてない頃に作った割には意外と楽しかったです。
2. イオンルーム
問題PDF本誌151号没作品。パズルとして解くことはできますが全体的にチマチマ感や単調感が強いパズルで10x10サイズでもうおなかいっぱいかなという感じのパズル。③④のルール上やむを得ないのですが部屋の分割の複雑さのわりに完成盤面が+-の単調な市松状になりがちなのもなんとなく気になる点。プラスとマイナスの差分をヒントにするというアイデアは本誌149号くらいの「マグプレ」というパズルから拝借したものでした。
3. へやきり
問題PDF本誌151号没作品。印象が地味で自分の中でも記憶からほとんど消えかけていた初期の作品。「縦横さん」に計算要素を入れた感じのパズルになっていて、③の線を引かせない方向のルールと④の線を引かせる方向のルールが良い感じにトレードオフがとれて綺麗にまとまったルールだとは思いますがまあ全体的に地味です。当時はとにかく載せたい一心で出来上がった作品は質はともなくまとめて送りつけてました。
4. タイルコンベア
問題PDF本誌153号没作品。ベルトコンベアを敷き詰める系のパズルで何か作りたいなと思っていてこの後も何度かセルフ改作を試みてはいるのですが結局投稿段階までまとまることなく今に至ります。黒鉛筆で解こうとすると盤面がゴチャゴチャして非常に見づらいので色ペン推奨です。余談ですが、割と最近の「時限爆弾」(本誌163号掲載)は実はこの時期からあった案でして、思いついた新作を勢いで投稿しちゃうよりは一度期間を置いておいてじっくりルールの検討とか問題の洗練とかして寝かせた方がいいのかなと最近考えていたり。
5. ワンダーラウンド
問題PDF本誌153号没作品。小学生くらいのころにも少しニコリにハマっていた時期があって、このときこの〇がないバージョンのパズルを3問だけ書いた紙切れを編集部に送り付けた記憶があります(ロクにチェックしてないので多分別解あり、しかも後に「ラインスイーパー」という全く同じルールのパズルがあることが判明)。〇の一気通過ルールは今見返してもなかなかいい感じの味が出せてると思うので今後に生かせたらいいですね。自分の中では最後の「おやこどり」に次いで二番目にお気に入りで大きい盤面にしたら楽しそう(作ったことはないけど)。
6. うきわじま
問題PDF154号没作品。「夢でこんな感じの完成盤面を見て面白そうだと思った」という謎の動機から生まれたパズル。浮き輪で島をつなげるという謎コンセプトも盤面の見た目にこだわった結果辿り着いた末です。当時ちょうど「クロット」が終了したこともありこれをリスペクトしたルールになっていますがまあ元々が人気のあった二軍だしそれほど面白く進歩したわけでもないので没も納得はいきます。全連結ルールは悩んだ末後付けで加えたものなのでこのルールを生かせた問題があんまり作れていません。
7. サンクル
問題PDF155号没作品。「クロクローン」、「月か太陽」と味を占めてとにかく安定志向(作問のしやすさと自由度の高さ)に舵を切った結果の産物。名前も「サークル」+「3」というこれまた安直なネーミング。無難なルールで自由度が高いパズルですが、久しぶりに解いてみるとヒント数字と3つだけルールで2種類の「数える」要素があるせいで途中でごっちゃになってややこしいです。しかも改めて解きなおすと10番と13番以外は他のパズルで見たことあるような解き味ばかりでそんなに面白くないという。
8. 感染道路
問題PDF156号没作品。このころからオモパ制作の方向性を独自性重視に路線変換。これは正直ルールやら解き味やらが尖りすぎててハナから載るとは思っておらず本命の「ストストーン」の前座として生贄になってもらったやつです。元々はゾンビパニックみたいなタイトルで次々と感染していくゾンビ(黒丸)を人間(白丸)が退治していくみたいなコンセプトだったのですが、中級以降の展開がことごとく「人間が殺しをしたくてしょうがないから合法に殺せるようわざと感染を拡げていく」というなんともサイコパスなものに。さすがにこれはまずいだろうと言うことで路線図に見立てたこのタイトルになりました。
9. おでんでお
問題PDF158号没作品。投稿時はわりと自信があったんですが今原稿を見返してみると8x8あたりからあからさまに作り飽きていて作問の質があまりよろしくないです(締め切り直前に思いついたルールで何十問も一気につくると大体こうなります)。最後の10x10の問題は原稿がスカスカだったのでこの記事用に急遽こしらえたものです。「回文」をテーマにいろいろこねくり回していくうちに出来上がったパズルで、一時期は〇△□のおでんじゃなくて〇●をお団子に見立てた「ゴンダンゴ」というタイトルだった時期もありました。いずれにしても串の両端に刺さってるととても食べづらそうで嫌ですね。
10. おやこどり
問題PDF159号没作品。158号の「わたりどり」と「ぐんたいあり」がどちらの似た感じで好みの解き味だったのでこれを一つにまとめられないかと思案した結果生まれたパズル。当時ブームだったけものフレンズに便乗して動物園テーマで何か作りたいなと思っていたこともありこんな感じにまとまりました。ストーリー、見た目、解き味の三点が揃っていてかなり気に入っていたのですが没となってしまいました。今回この記事を書いたのはこれを公開したかったからといっても過言ではないです。
どうだったでしょうか。没作品ということもあり実際の本誌の掲載作品と比べると当然見劣りする部分が多いので、もっと良質なオモパを楽しみたければ是非ニコリ本誌を買ってみてください。
最新刊のオモパコーナーには「ぬりみさき」、「ダブルチョコ」、「ミッドループ」、「ニブンノゴ」と今後にかなり期待できそうなパズルもありますし、新作だと「スクリン」が個人的な一押しです。現在の二軍枠だと「ペンシルズ」と自分が原作を手掛けた「ストストーン」がホットです。
最後に、これを機にペンシルパズルに、そしてオモパに興味を持ってくれる人が増えてくれることを願って。